◆あとがき
チンクエテッレにはこれまでも何度か仕事で行ったことがあったけれど、まさか国立公園の中にある施設でお料理研修コースを開催することになるとは私自身予想だにしていなかった。
宿泊施設は2階建ての一軒家
2階が寝室になっています |
前年、あるデパート催事のイタリアンフェアーでジェノバの老舗 Pietro Romanengo(ピエトロ ロマネンゴ)の通訳をした。小さい頃からマロングラッセが苦手だった私にとって彼らのそれはこれまでの印象を180度変えるものだった。
さすがに老舗だけあって上品な甘さ、濃厚な栗の味。何よりもその栗の大きさとやわらかさに感動し、ジェノバへ行って見たいという思いにかられた。
1階はキッチンと居間 |
年が明け、彼らから招待を受けジェノバを訪れた。当然の事ながら本社工場を見学させてもらい、フェアーでデモンストレーションをしていた職人のマルチェッロがあの美味しかったマロングラッセやFrutta
candita(フルッタ カンディータと読む−フルーツのシロップ漬け、シュガーコーティングの意)が作られる工程の説明をしてくれる。
工場見学の後、ロマネンゴ社のコンサルタントAndrea氏がオリエンタル市場を案内してくれ、食材やショップについても詳しく説明して下さった。
青い空に映える真っ白な教会 |
一泊二日でジェノバをアンドレアさんと共に散策し、彼のお陰でジェノバ近郊のいくつかの情報を得、実際コンタクトを取りアグリトゥーリズモやホテルなどいろいろ訪れたが私の求めるものにはなかなか出会えなかった。でも、知れば知るほどジェノバ、もしくはリグーリアでコースを開催したい。私の願いはつのるばかり。
しばらくして、アンドレアさんからの誘いを受け、彼の友達の働くチンクエテッレ国立公園を訪れた。それが、今回私たちがお世話になった Santuario
di Montenero(サントゥアーリオ ディ モンテネーロ)である。
山と海の両方が見渡せる絶景はもちろんの事、私のコンセプト−レストラン料理ではなく、なくなりつつある手作りの昔ながらの家庭料理を習う−に賛同し、全面的にバックアップしてくれる彼らにも感動しここでのツアーを企画。大切な要素のひとつ、不便な田舎のスローライフという条件も満たしている。
ちなみに後に知ったことだけれど、Andrea氏の友人Doriano氏はチンクエテッレ国立公園の副長だった。
宿泊してもしなくてもここのレストランで
食事がいただけます |
こうしてアンドレアさんからドリアーノさんにバトンが渡され、その後は宿泊施設で働くオルガとミレーナ姉妹と連絡を取り、ドリアーノさんの知り合いのマルタさんが先生となることになりツアーの時を迎えた。
初日のマルタさんはかなり緊張していらした。
「だって、人に教えるなんて娘以外にしたことないのよ」とのこと。
「そういう人じゃないと困るんだからいいんですって」と私。
そんな緊張も人なつっこい私の生徒たちと接するうちにどこへやら。だんだん余裕を見せおどけてみたりして、さすがはイタリアマンマ!もっとあれも、これも教えたいと、最終日はやっぱり時間が大幅に延長してしまいました。
初めての事で気苦労も沢山あったと思うけれど(日本人に初めて接した方だったし)
お世話になったキッチン |
「こんな企画をしてくれてありがとう、数年前に大病してからずっと落ち込んでいたんだけれど、今回の事はとても楽しかったしなんだかポジティブになれたわ」と言って下さった。
彼女もまた時代が時代なら働く女性になっていたに違いない人だった。
日本人側から良かったと言ってもらえるのももちろん嬉しいし励みになるけれど、イタリア人側からの言葉もまた次へつなげてゆこうという力になっている。
今回も協力して下さった全ての方に感謝しています。
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